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バランスシート不況下の世界経済 リチャードクー

バランスシート不況下の世界経済は、野村総合研究所で主席研究員を務めるリチャード・クー氏が2013年12月に出版した本です。

この本で、なぜ世界の主要国が金融緩和政策を実施しても、経済が回復しないのかを解き明かすことを主題にして書かれています。

そして20年前の日本と、近年の欧米で共通している点として、借金で資金調達されたことによってもたらされた巨大な資産バブルが崩壊したことを挙げて、約20年前の日本や2008年のヨーロッパやアメリカでのバブル崩壊は、住宅価格のバブル崩壊と同じ意味であり、バランスシート不況の原因と述べています。

このバランスシート不況の結果、各国の中央銀行が急速に金利を大幅に引き下げたわけですが、各国の経済活動はきわめて鈍いと述べています。具体的には、2013年の時点でヨーロッパの鉱工業生産は2003年の水準に戻ったばかりであり、失業率にいたっては10%を超えたレベルに留まっていると述べています。

リチャード・クー氏は、各国の中央銀行が大幅に金利を引き下げて、なおかつ大規模な量的金融緩和を実施しているにもかかわらず、マネーサプライや民間企業向けの融資が増えていないのは異常であると述べています。つまり、大規模な金融緩和政策によってマネタリーベースでは大膨張しているにもかかわらず、実際にはマネーサプライが増えていないため、市場へのお金の流通量にはほとんど変化がないのです。つまり、経済活動への好影響はほとんどないと述べています。

この原因について、リチャード・クー氏は、民間企業はバブル崩壊後の借金返済や不良債権処理に懸命に取り組んでいるため、新たに借金をして設備投資などの投資を実行する気持ちはないのだと説明しています。

これが、バブル崩壊後のバランスシート不況の本質であり、政府が金融緩和政策を実施するだけでは経済活動を回復させることはできず、まずは政府が借金をして財政出動をすることによって需要を生み出す必要があると述べています。

そして、経済活動が回復する前の段階で、財政再建を主眼に置くことはリスクが高いと示唆しています。

金融緩和政策を実施してもデフレ脱却は実現せず

この本を読むまでは、日本銀行が大規模な金融緩和政策を実施さえすれば、日本経済を立て直し、日本経済を再び成長軌道に乗せることができると思い込んでいました。つまり大規模な金融緩和政策を実施することによって日経平均株価は2万円を超え、3万円を目指すものと思い込んでいたのです。

しかし、現実には日本銀行がいくら大規模に金融緩和政策を実施しても、デフレ脱却は実現せず、いまだに消費者物価はデフレ状態のままにあります。そして、2016年に入って日経平均株価は一時14000円台まで下落しました。金融緩和政策だけでは、日本経済は回復しないのだということを思い知らされました。

そして、この本を読んで、民間企業の経営者心理としては、バブル崩壊後の不良債権処理や借金返済に追われた人々は、会社のバランスシートが修復したあとも、これまでの苦しい経験がトラウマとなっており、できるだけ借金を増やしたくないと考える傾向にあることに気がついたのでした。迂闊であったと思います。つまり、いくら日本銀行が金融緩和を実施して金利を低めに誘導しても、肝心の民間企業による資金需要の回復がきわめて緩やかなものになっていることを教えられました。

また、民間企業が積極的に借金をして設備投資を増やそうとするまでは、政府が借金をして財政出動をすることによって需要を喚起し、経済を下支えする必要があるのだと知りました。そして、日本政府が財政均衡や財政再建だけにこだわっていたら、日本経済は再び不況に転落する恐れさえあるのだと知りました。

私は、ファンドマネージャーをしていますが、昨年この本を読んだおかげで、2016年初頭の暴落では損失をこうむらなくて済みました。すでに2015年の12月時点で大幅に株式を売却できていたのです。この本のおかげで、株価が買い一辺倒ではいけないと判断できたと思います。日本銀行の金融緩和政策を無条件に信じて、追加緩和をすれば必ず経済が拡大し、株価が上がるなどという思い込みを捨て去ることができました。この本を読んだことは、投資をするうえで大きな収穫だったと考えています。

政治家に読んでほしい

与野党を問わず政治家にまずお勧めできると思います。多くの政治家は、財政再建を重視しています。しかし、消費税や所得税を増税するようなら、再び日本経済は収縮傾向を示し、不況に突入してしまう可能性があると思います。

ですから結果的には増税をすることによって、税収は減るのだと思います。

この本を読んで、そう感じました。ですから、多くの政治家の皆さんにこの本を読んでいただき、財政再建を果たすためには、その前にまず経済成長を果たさなければいけないのだと認識していただきたいのです。

政治家がこの考えを共有することによって、何がなんでも消費税を増税するのではなく、まずは政府が借金をして財政出動をして需要を生み出し、この動きに民間企業が続くことによって民間も借金を増やして設備投資をするようになれば、経済の回復は本物だと思います。

そのときに初めて、政府は財政再建を考えることができるのだと思います。

政治家や財務省の官僚の皆さんには読んでいただきたいと思います。

blog.goo.ne.jp

バランスシート不況下の世界経済 (一般書)

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