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良い値決め悪い値決め 田中靖浩

田中公認会計士事務所所長の田中靖浩氏が執筆した書籍になります。タイトルからも分かるように商売では重要な要素を占める値決めについて徹底的に分析した本になってきます。この「良い値決め悪い値決め」は日本ではびこっている売上至上主義に真向から反論を唱えるものになっています。「良い値決め悪い値決め」ではこれからの値決めの考え方はアメリカ式の「バリュープライシング」の考え方を取る必要があると提唱しています。

バリュープライシングというのはある商品・サービスを考え出した時に、そのサービスを「いくらならお客さんが買ってくれるか」という点でまず売価を決めることに特徴があります。この際のポイントはいくらならお客さんがお金を出してくれるかという金額で出来る限り高い値段をつけるということです。日本では安ければお客さんが商品・サービスを買ってくれると考えてしまいがちですが、実際どんなに安くてもその商品に価値が無ければお客さんが購入してくれるということはありません。

逆に言うと、その商品に他では代えられないような価値があったり、どうしてもお客さんが喉から手が出るほど欲しくなってしまうような価値があれば、高い値段であってもどんどんその商品・サービスは売れていくということになります。

したがって、まずは高い顧客満足を引き出すような商品・サービスを開発して、それを高値で売るということを目指していくのがアメリカ式の「バリュープライシング」の考え方になります。

特にこのようなバリュープライシングで高付加価値の商品として認識してもらうために、顧客に居心地の良さを提供したり、顧客と個人的な人間関係を築くことが大切であるとこの「良い値決め悪い値決め」では述べています。

また、このような高い値段で商品・サービスの値決めをすることを実現するために、アンカリングといった手法を提唱しています。

このアンカリングでは「何かを基準にして、それよりお得感を出す」もしくは「何らかの高い価値を持つサービスを比較対象にして、それよりも価値があるもしくは同等の価値があるため、高い値段が当然である」といった形で何らかの比較対象となる基準を提供して顧客にその値段であることの妥当性を納得させるという手法を取ることをすすめています。

「売上至上主義」の問題点を鋭く指摘した本

この「良い値決め悪い値決め」は先ほども述べましたが、今までの日本のビジネスではびこってきた「売上至上主義」の問題点を鋭く指摘した本になります。今まで日本の企業では売上高が大きいことが重視され、会社や部門の目標も売上高の金額で設定されるというケースが多くみられました。

ただ、この著者は「売上高が大きくても、経営は楽にならない。むしろ重視すべきは商品・サービス1個当たりの儲けから見える本当の利益である」ということを述べています。

例えば、売上が同じでも1個当たりの値決めが違う場合の例を見ていきたいと思います。1個の商品の原価が100万円の商品を210万円で売った場合、売上高2,100万円を達成したいという場合には10個の売り上げが必要になります。

この場合、商品1個当たりの利益を見ていくと、「210万円-100万円=110万円」となります。したがって、商品1個当たりの利益から見える本当の利益というのは「110万円×10個=1,100万円」になります。

これに対して、同じ原価が100万円の商品を半額の105万円で売った場合はどうでしょうか。この場合には売上高2,100万円を達成するためには20個の売り上げが必要になります。そして、商品1個当たりの利益を見ていくと、「105万円-100万円=5万円」となります。ここから本当の利益を見ていくと「5万円×20個=100万円」になります。

このように見ていくと、同じ売上高2,100万円を達成したケースでも会社に入ってくる利益は前者が1,100万円、後者が100万円となり、1,000万円もの違いが出てきます。加えて、後者の場合は前者の商品数が10個であるのに対して、20個という2倍の数の商品を作る必要があるため、単純に言えば、2倍忙しくなります。したがって、安い値段で商品やサービスを販売することが、商品1個当たりの利益を減少させるため、それを補うために商品の生産量を増やす必要性を生み、結果的に作業量を増大させることが分かります。

そのため、作業量を減らして、なおかつ利益を上げたいと考えるのであれば、いかに高い付加価値をつけて、高い値段で売るかということを考えていく必要があります。

全ての個人事業主・フリーランサーにおすすめ

この「良い値決め悪い値決め」がおすすめできるのは全ての個人事業主・フリーランサーになります。中でもフリーランサーの中で忙しいのになかなか生活が豊かにならないと感じている人にとっては必読書といっても良いでしょう。

特に「売上を上げるためには値引きが当然必要だ」という固定観念に縛られている人にとってはぜひ一読をおすすめしたい書籍になります。

また、筆者はこの「良い値決め悪い値決め」の中で、このような値決めが最も難しい職種として士業・ライター・デザイナーのような職種を上げています。このような職種に関してはそもそも原価が発生しないため、どこまでも値引きをしていくことが可能になってしまうという特徴があります。

また、商品とは違って、このようなフリーランサーが値段をつけているのはサービスの質、つまりは自分自身の能力になります。結果的に自分自身を過少評価する傾向が強い日本人はこの値決めが苦手で安価な値段で契約を結んでしまうため、儲けが少なくなるという傾向が強くなります。

したがって、「出来るだけ安くいいサービスを届ける」という考え方から「出来るだけ高い価格で顧客満足を目指す」という方向に考え方を変えていく必要があります。

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良い値決め 悪い値決め ―きちんと儲けるためのプライシング戦略

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